キレてます(人事コンサルの日常など)

経営コンサルタント各務晶久が日々の雑感、ノウハウなんかを綴ります

抽象度を上げてみよう

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メーカー勤務時代のことだ。

本社に異動した直後、上司から「お前はせっかくの現場経験を一般化して話せないんだよなー」と言われたことがある。

 

当時の私は、「個々の職場事情を一般論として話せるわけない、変なこというなぁ」くらいに聞いていた。

 

今振り返っても、その上司はかなり舌足らずだったが、当時の私の理解力にも問題があった。

 

上司が言いたかったのは、自分の経験の抽象度を高めて、一般化せよということだったのだ。

個別事象の抽象度を高めると、汎用性が上がり、普遍化できる。

 

こう書いても、よくわからないかもしれないので、具体例で説明したい。

 

介護施設を運営するクライアントで起きたトラブルで次のようなものがある。


女性介護職員が大きく二つの派閥に分かれ、それぞれが相手の一派を陰で激しく罵っていた。言い分はこうだ。

 

Aグループ

「ご利用者様(高齢者)はお客様だ。いくら親しくなっても敬語は崩すべきでない。それなのに、あの人たちの言葉遣いときたら・・・許せない。」

 

Bグループ

「いつまでも敬語を使い続けると距離が縮まらない。親しみを込めてフレンドリーに接するべきだ。あの人たちのしゃべり方は他人行儀で、真心がまったく感じられない。」

 

どちらもそれぞれ正論で、正解はない。

 

ここまでが、個別事象である。

 

多くのビジネスパーソンは、組織内の課題だけに対処すればよい。

こういう事象を目の当たりにしても、解決すれば仕事はおしまいだ。

だから、経験したケースの抽象度を高めて一般化し、概念的に整理するよう訓練されていない(かつて私自身もそうだった)。

 

この事例の抽象度を極度に上げると、「組織構成員同士の対立」となるが、これでは抽象度が高すぎて、一般化して適用できる経験則が得られない。

 

もう少し、抽象度を落とすと、「価値観の分かれる事柄については、予め組織のポリシーを明確にしておかいと、構成員同士でコンフリクトを起こす」とでもいえるだろうか。

 

これくらいの抽象度なら、普遍性を持つ一般化ができており、この事例から得られた経験則や教訓として組織外で語ることができる。

 

どこの組織で、どんな仕事をしていても、日々課題に直面するはずだ。

そこでの経験を抽象化、一般化する訓練を積むことが肝心だ。

特に、管理職や経営層には必須の能力であり、これができないと、いくら名プレイヤーでも名監督にはなれない。

 

よく、微に入り細に入りクドクド話す人がいて困るだろう。「ひとことで言うと何?」と言いたくなるような人だ。こういう人は概念的にものを考える訓練が出来ていない。

 

経営コンサルを目指す人は、徹底的に抽象思考の訓練を積んで欲しい。

抽象概念を扱う思考訓練が出来ていないと、仮に経営コンサルの職にありつけても、著しいミスマッチを起こすことは目に見えている。

 

中小企業診断士の資格を取ってもコンサルができない人はこの点に問題があるのだが、詳しくは次回に・・・。