キレてます(人事コンサルの日常など)

経営コンサルタント各務晶久が日々の雑感、ノウハウなんかを綴ります

月刊人事マネジメント寄稿記事)実例!人事のコンフリクトマネジメント5 “意識高い系”部下 vs 実直上司 (2/2)

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 前回の続き(実例5 営業トップ  vs  経営層 の2回目)

 

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相馬課長の視点 地道な実務経験は必須

 財務の仕事をこなすには,税務,会計,簿記,連結決算,財務分析など多岐にわたる知識が必要だ。

 これらの知識を習得するには何年もかけて,地道に実務経験を積み上げていくほかない。

 吉川君はセミナーや異業種交流会ばかりに熱心で,税法や会計などの勉強は避けているようだ。入社して 2 年になるが,あまり業務知識は増えていない。

 しかし,長い目でみて何とか育成していこうと思っていたのに。

対立点の抽出 独り立ちまでの時間軸に大きな差

 剛田さんが理想とするのは,部下の悩みをよく聞き,共感を示すことで,部下のやる気を引き出す管理職だ。

 一方,経営陣は目の前の課題を論理的に,かつ具体的に解決することを管理職に求めていた。

 双方がイメージする管理職像にズレがあったため,期待する行動や成果にも当然ズレが生じ,コンフリクトを生じたのである。 

人事部門の役割 独り立ちまでの時間軸に大きな差

 吉川君は 2 ~ 3年で独り立ちし,幅広い仕事を任せてもらえるイメージを抱いていた。一方の相馬課長は10年選手でようやく一人前のイメージを抱いていた。双 方の時間軸に大きな隔たりがあるためコンフリクトを生んだケースである。

 吉川君はベンチャーからの転職者であるため,成長が遅いのは社風のせいだと考え,絶望的な気持ちになった。しかし,これは社風というより,職種の違いだ。

 営業職は,独り立ちするまでに備えておかねばならないスキルセットの幅が狭くて浅い。反面,成果は,本人の活動量や形式知化しにくいセンスによるところが大き い。

 だから業種にかかわらず,せいぜい半年もすれば 1 人で客先を任せられることがほとんどだ。 2 年選手と10年選手が半期の売上では十分勝負できてしまう職種でも ある。

 一方で,財務や法務,人事といった管理部門の職種は,広くて深いスキルセットを備えなければならず,一人前になるまでに要する期間が,営業職と比較すると長く なる。

 この違いを吉川君が理解できず,徐々に業務の幅を広げていく育成方針に納得できなかった。

 さらに彼は,外部の勉強会や,SNSでの情報交換によって,同年代の活躍ぶりを必要以上に意識していた。

 起業に成功した一部の人を除き,一般的な27 ~ 28歳の会社員の活躍の幅はたかが知れており,焦る必要はないだろう。にもかかわらず,SNSで発信される「背 伸びだらけ」の同年代の活躍を鵜呑みにし,自分だけ取り残されている感覚に陥ったのだ。

 また,勉強会などで「経営者目線」などの文言に触れる一方で,実際に自分が担当している業務レベルとのギャップに辟易としたことも影響した。

 もっと自分を生かしてくれる環境があると考えたのだ。

人事部門の役割 職種ごとのキャリアプランを示す

 今回の事例は,“意識高い系”の特殊な例のように思えるが,決してそうではない。

 営業職に嫌気がさし,内勤職へ転換した人が直面するコンフリクトの典型例でもある。

 若年層の一定数は企業が想定する時間軸とのズレを抱えていると思ったほうがよい。

 就社意識が薄れるなか, 1 つの企業で長期間のキャリア形成を考えるのが難しくなっている。新卒者ならまだしも,キャリア採用者にそれを求めるのはもっと難し い。

 このようななか,人事部門の役割としては,①新卒であれ,キャリア採用であれ,当該職種における一人前のイメージを定め,②それを満たす知識・スキル・経験な どを固め,③どういう手順,どういう期間でそれを習熟・修得させていくのか,というキャリアプランの策定と提示が求められる。

 キャリアゴールのイメージが分からず,日々悶々と過ごし,ある日突然,この実例のように,自らのイメージとかけ離れたことを言い渡されると失望するのは当然ともいえるからだ。

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