キレてます(人事コンサルの日常など)

経営コンサルタント各務晶久が日々の雑感、ノウハウなんかを綴ります

月刊人事マネジメント寄稿記事)実例!人事のコンフリクトマネジメント6 女性総合職  vs  男性上司 (2/2)

この連載をもとにした本が出版されます=>詳しくはこちら

 

 前回の続き(実例6 女性総合職  vs  男性上司 の2回目)

 

f:id:a-kagamiglodeacojp:20190605120057j:plain


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

松本課長の視点 処遇と責任はワンセット

 うちの課には 4 名の女性一般職が在籍している。彼女たちと浜田さんの給与格差は 2 倍近い。

 当然,総合職を選択する以上,彼女たちより難易度が高い仕事を担い,重い成果責任を負う必要がある。復帰に際し,ある程度家庭の事情には配慮したつもりだ。し かし,一般職がいる前で,家庭の事情を持ち出されても耳を貸すわけにはいかない。うちの課には,家庭を優先するために総合職から一般職に転換した者もいるからだ。

 宿泊出張といっても,年間数回程度だ。それくらいは総合職を選択した時点で覚悟すべきだろう。

 以前の彼女は総合職であることにプライドを持ち,プライベートを会社に持ち込む一般職に厳しかったし,ハードワークを厭わなかった。そんな彼女だからこそ,年 長者より高給でも周囲から文句が出なかった。

 しかし今回の一件で,うちの課の一般職や派遣社員は,彼女の考え方が「甘い」と反感を持ってしまったようである。表面上は彼女の愚痴を聞き,同情する態度を示 してはいるが,このままではいずれ彼女は孤立しかねない。

 彼女だけ特別扱いするわけにもいかず,彼女の提案を受け入れるわけには到底いかない。

対立点の抽出 感情面にフォーカスできなかった

 このケースでは「松本課長 vs 浜田さん」のコンフリクトに加え,「浜田さん vs 一般職の女性たち」というコンフリクトも起こしてしまった。

 幼い子供を抱えながら,「これまで通り働くこと」について,松本課長と浜田さんの双方が十分イメージできていなかったし,事前の摺り合わせが不十分だった。

 それに加え,感情面の葛藤が大きい。松本課長は職場のバランスや制度論にフォーカスし,浜田さんのキャリア形成にかけてきた感情面を汲んでいなかった。一方の 浜田さんは自分のことで頭がいっぱいで,職場の一般職の感情面まで斟酌していなかったのだ。

人事部門の役割 人事評価でバランスを

 ダイバーシティを進めるうえで,今回のようなケースは今後増加していくだろう。

 事例会社では,せっかく育成した人材が結婚や出産で流出しないよう取り組んでいるが,運用が悪いせいで葛藤を生んでいる。

 キャリアを生かし,やりがいのある仕事をしつつ,家庭事情にも配慮してほしいというのは「良いとこ取り」として非難される結果となっている。

 女性の活用を推進するなら,総合職,一般職を問わず,どちらも家庭と両立するよう配慮が必要だ。これまで通り働けないなら一般職に転換し,定型業務をさせるという極端な運用は,育成コストをムダにする。

 今回のケースでなくても,高いスキルや経験を備えている人材は総合職として復帰させるべきだ。家庭との両立によってアウトプットが落ちるのなら,それは人事評価に適正に反映すればよい。もとより業績評価は,外部条件や本人条件といった中間項を斟酌しないのが人事評価の大原則だ。

 働き方の多様性は認めつつ,アウトプットの差は遠慮せず処遇に反映すればよい。家庭事情を斟酌して人事評価を修正すると,今度は同じ総合職同士でバランスがとれなくなる。

 ダイバーシティ推進には,人事評価でバランスをとることが重要だ。その点で人事部門は重要な役割を担っている。

掲載記事のPDFは=>こちら 

 

この雑誌連載記事が出版されます!

詳しくは↓

a-kagami.hatenablog.jp