キレてます(人事コンサルの日常など)

経営コンサルタント各務晶久が日々の雑感、ノウハウなんかを綴ります

月刊人事マネジメント寄稿記事)実例!人事のコンフリクトマネジメント4 上昇志向 VS 専門志向 (2/2)

 

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 前回の続き(実例4 営業トップ  vs  経営層 の2回目)

 

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経営陣の視点 課題解決能力が欲しい

 「剛田マネージャーに相談を持ち掛けても,具体的な解決策は何一つ示してくれない」という不満が多く寄せられている。親身になって話を聞いてくれるが,「つら
いけど頑張っていこう」と言われるだけで,何をどうすればよいのか,一切アドバイスがないそうだ。

 若く,未熟な営業担当者は,どのように業績を伸ばせばよいか余計に悩み,他チームの同期によく愚痴をこぼしている。また,大口顧客は彼自身が離さず,手柄を部下に譲らないという不満も聞く。

 このようなことから,彼のマネージャー就任後,チーム業績は如実に落ち込んでいる。彼に改善計画をまとめるように指示したが,「チームワークを引き上げる」「個々人のやる気を引き出す」といった抽象的な内容ばかりだ。

 管理職として,大局的な目で原因を分析し,具体的な対策を列挙し,優先順位を付けて提案してほしかったが,期待外れだった。精神論ばかりで,論理性や手段の具体性に乏しいからだ。

 高い業績を上げるノウハウを若手に注ぎ込んでほしかったが,出し惜しみしているようにしか見えない。 

対立点の抽出 管理職イメージに大きな違い

 剛田さんが理想とするのは,部下の悩みをよく聞き,共感を示すことで,部下のやる気を引き出す管理職だ。

 一方,経営陣は目の前の課題を論理的に,かつ具体的に解決することを管理職に求めていた。

 双方がイメージする管理職像にズレがあったため,期待する行動や成果にも当然ズレが生じ,コンフリクトを生じたのである。 

人事部門の役割 3つの対策

 圧倒的に多いのが,今回のケースとは真逆のケースだろう。モーレツ営業マンを管理職に昇進させたら,根性論で部下を追い立てて潰してしまうケースだ。
 今回のケースは,これまでの組織風土に問題意識を持っていた剛田さんが,民主的リーダーになろうとして失敗した事例だ。
 本人は民主的リーダーシップを発揮したつもりだが,部下や経営陣からは,精神論しか言わないと,結局モーレツ上司と同じ評価を受けている点が実に興味深い。
 このようなことがなぜ起こるのだろうか? その原因と対策は以下の 3 つに大別できる。
 まず, 1 点目が,管理職の「選抜」問題である。

 言い古された表現であるが,優秀なプレーヤーが名監督になるとは限らない。従って,プレーヤー時代の業績とは別の視点で管理職を選抜すべきだ。

 三隅二不二氏のPM理論にある通り,「業績志向」「(人間関係の)維持志向」の 2 つが共に高い管理職を選抜する努力が必要だ。剛田氏は「人間関係の維持志向」は高
いが,チームの「業績志向」が甚だ弱かったといえる。

  2 点目が,管理職としての訓練を一切積まずに任用してしまうことだ。

 これまでプレーヤーだった者が,ある日突然,計数管理を求められたり,細かな管理資料を作成させられたりするため,十分にその役割が果たせない。

 しかし,これらの仕事を通じ,プレーヤー時代とは異なる大局観や論理性が初めて磨かれる面もある。

 よって,人事部門は早い段階で管理職候補者に間接部門の仕事を経験させるよう取り計らうべきだ。

 高い業績を上げる者をプレーヤーから外すのは勇気が要るが,非常に重要な人事異動だ。なにも部門間異動の必要はなく,部門内で間接業務を経験させれば十分だ。

  3 点目が,会社が管理職の役割を明文化していないことだ。

「管理職としての働きが分かっていない」と嘆く中小企業経営者に「管理職の職務分掌規程を作っていますか?」と質問して,まともに作っていた試しがない。

 会社が管理職に期待する役割を明確にせず,「社員が分かっていない」と嘆くのは的外れだろう。

 

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