月刊人事マネジメント寄稿記事)実例!人事のコンフリクトマネジメント5 ”意識高い系”部下 vs 実直上司 (1/2)
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月刊人事マネジメント2019年4月号に私が寄稿した記事の転載許可が下りたので、分割して紹介することにしたい。
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実例!人事のコンフリクトマネジメント
~「価値観の対立」を越えて職場のダイバーシティを進めよう~
事例5 “意識高い系”部下 vs 実直上司
自己啓発や外部の人脈づくりに関心が高く,SNSを通じて自己顕示欲を満たすことに執心する“意識高い系”若手社員はどこの企業でも一定数見られるものだ。
何も能力開発や資格取得などに熱心な人たちが十把一絡げに“意識高い系”と揶揄されているわけではない。起業や意識改革などの自己啓発系セミナー,異業種交流会,若手ベンチャー経営者を囲む会などに積極的に参加し,自分たちも若くして成功することを夢見るが,地道な業務知識習得や実務経験の積み上げを嫌うため,“意識高い系”と周囲から冷めた目で見られている。
今回は,このような“意識高い系”若手社員と地道に実務経験を積み重ねてきた実直型上司との間で生じたコンフリクト事例を紹介する(人物名,企業名は仮称)。
問題シーン 石の上にも10年
吉川英二君(27歳)は総合電機メーカー東松電器の財務部に在籍している。新卒で入社したのは別のベンチャー企業だったが,過酷な営業職の仕事はいつまでもできないと考え,専門性の高い管理部門の職種に就きたいと東松電器に転職して 2 年が経過した。
吉川君は若くして成功したベンチャー企業経営者に強い憧れを抱いている。彼らの書籍が机の上には何冊も並べられ,著名経営者の座右の銘が貼られている。
週末にはセミナーや異業種交流会へ積極的に参加しているようで,月曜になると「すごい奴がいっぱいいた。刺激を受けた」とよく同僚に話している。
そんな折,人事評価面接の日がやってきた。相馬課長(41歳)との 1 対 1 の面接である。
相馬課長は入社以来,財務畑一筋のたたき上げである。
面接では「業務スキル向上への取り組み」という評価項目のフィードバックが行われた。本人評価が高く,上司評価が低かったからだ。相馬課長はもう少し身を入れ て知識の補充に努めるよう指導したが,吉川君は憮然としていた。
面接の最後に,相馬課長が「何か聞いておきたいことはあるか?」と問いかけた。
吉川君は「財務の担当者として一人前と認められるには何年くらいかかりますか? 関係会社の財務担当部長と 1 対 1 で折衝できるようになるにはどれくらいかかる のでしょう?」と質問した。
「頑張れば10年くらいで一人前になれるよ」と相馬課長は笑顔で答えたが,「10年ですか…」と吉川君の表情がみるみるうちに曇っていった。
2 ヵ月後,突然,吉川君は退職願いを相馬課長に提出した。
吉川君の視点 短期間で成長したい
以前いたベンチャー企業では,若手にも仕事の裁量を与えられ,日々の成長が実感できた。
この会社に入ってからは,仕事の一部分しか任せてもらえない。
課長や同僚は,仲間うちだけの世界にいて,他社では若手がどれだけ活躍しているかを知らない。
うちは年功序列なので,能力があっても仕事を任せてもらえず,一人前になるのに10年もかかるそうだ。
10年もすれば,他社で活躍する同年代はもっと大きな仕事をしているはずだ。
今のような地味な下積みを10年も続けるのは時間の無駄だ。こんな会社にはさっさと見切りをつけて,自分を生かせる会社に転職するほうが早道だと思う。
もう一方の相馬課長の視点はどのようなものだったのか?
このようなコンフリクトを防止するためにどのように人事が関与すべきだろうか?
詳しくは次回!
次回・・・実例5 “意識高い系”部下 vs 実直上司(2/2)
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