仕事の守破離
新卒で入社した会社で、初めての上司に「仕事は『守破離』だ」と教えてもらった。
その後、何人も同じことを言う人がいたので、すっかり常識だと思っていた。
最近、研修なんかで受講生に「『守破離』って知ってますか?」と問いかけても、若いビジネスパーソンはたいてい知らない。
この「守破離」、元々は茶道や武道なんかの師弟関係を述べたことのようだ。
それをビジネスに持ち込み、仕事の心構えを説くのに用いている(ここでは、ビジネスの話だけにする)。
まず、前任者のやり方を「守」って、そのまま覚える。完全にできるようになるまで、前任者の作った「型」をきっちり身に付ける。
それがきっちり出来るようになれば、「型」を「破」って、自分なりのやり方で改善・工夫してみる。自分の「色(=個性)」を見せるステージだ。
そして最後を下位者に任せて、その仕事から「離」れていく。自分はより難しい仕事にチャレンジするのだ。
さて、この「守破離」、人事の等級制度と似ている。
下級、中級、上級と一般社員を3等級程度に分ける場合、下級はルーチンワークをやれる人、中級は改善できる人、上級は下級者を指導できる人、という要件が等級定義に盛り込まれていることが多い。
「いくらまじめに仕事をしても給与が上がらない」という人は、今の仕事のやり方に疑問を持たず、改善工夫しないまま、ルーチンワークだけに熱心だからかもしれない(守破離の「破」が出来ていない)。
改善や工夫ができても、「自分がやった方が早い」と仕事を下級者に任せないなら、そこで行き詰まってしまう(守破離の「離」が出来ていない)。
こう考えると、自分がどのステージにいるか、会社からどう評価されているか、よくわかるはずだ。
ちなみに、よくスケールの大きな人のことを「型破り」というが、これは、型を身に付けた人がそれを破るからで、型を身に付けていない人は、「形無し」とばかにされる。
新入社員時代の私は、無駄が大嫌いで、生意気にも前任者のやり方を否定し、いきなり改善しようとした。
上司に「四の五の言わず、まずは今のやり方をマスターしろ!」と「守破離」を引き合いに出されて説教されたのだ。
さしずめ、上司から「形無し」と評価されたのだろう。