キレてます(人事コンサルの日常など)

経営コンサルタント各務晶久が日々の雑感、ノウハウなんかを綴ります

月刊人事マネジメント寄稿記事)実例!人事のコンフリクトマネジメント3 上昇志向 VS 専門志向 (2/2)

前回の続き(実例3 上昇志向  vs  専門志向 の2回目)

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水沼課長の視点 ポジションを高めることが大切

 中村君は中途採用なので,ともすれば社内で孤立しがちだ。能力は誰もが認めているので,必ず管理職として中核人材になれるはずである。ポジションを高めるために彼に足りないものは,社内の人脈だ。
 最近の若い人は飲み会を嫌うが,彼ほど極端な例も少ない。一見無駄に見える付き合いこそ,情報を得たり,人間関係をつくれたりするチャンスだ。
 ほかの人を差し置いて,地位を得ていくには,プライベートの時間を削って投資する必要がある。彼はそれが分かっていない。昔から,「資格取得の勉強ばかりやっている人間なんか出世しない」とよく言われているのを知らないのだろうか。

対立点の抽出 キャリアゴールの違い

 水沼課長は管理職になることがキャリアゴールであり,誰しもそれを目指すはずだと信じて疑わない。だから,中村さんに会社への忠誠心を求めるし,時間やコストの投資が必要だと説く。
 一方,中村さんは,所属組織にこだわらず,SEとしてのキャリアをどう形成するのかという点に関心を置いている。
 双方,目指すべきものが全く違うため,意見の噛み合いようがないのだ。

人事部門の役割 コスモポリタンへの対応

 社会学者のA.W.グールドナーは,水沼課長のように組織内の上昇志向を持つ者を「ローカル」,組織外の専門家社会を準拠集団とする者を「コスモポリタン」という概念で整理している。
 日本企業でもそろそろ「コスモポリタン」の処遇を本気で考えなければならない時期に来ている。にもかかわらず,人事担当者の多くが「ローカル」であって,「コスモポリタン」を肌感覚で理解できていない。人事の仕事は企業特殊的な仕事が多く,「ローカル」にならざるをえないからだ。

 その証拠に,多くの人事担当者から,「最近は管理職になりたがらない人が増えて困っている。割に合わないので,皆責任を引き受けたがらない。どうすればいいのか?」という相談をよく受ける。この背景には,「上昇志向がないことは悪いことで,やる気がない証拠だ!」という考えが透けて見える。
 だが,誰もが組織内で高い役職に就きたいと思っているわけではなく,ネガティブな意味で管理職を避けているわけではない。組織には「コスモポリタン」が一定数いて,長期勤続さえ念頭に置いていない場合もある。
 これまでの人事処遇制度では,管理職になれない人を処遇する「引き込み線」的な「専門職制度」が整えられ,運用されてきた。ポスト不足への対応かチームを率いるのが苦手だが高い業績を上げる「職人肌」の人を処遇するためのものだ。

 だから,専門職の処遇は管理職より一段落ちるイメージが付きまとう。また,専門職制度の多くが長期勤続を前提としており,組織をまたいでキャリア形成していくプロフェッショナル,つまり,「コスモポリタン」的人材を処遇するには使い勝手が悪い。
 「コスモポリタン」な高度専門職の処遇には,まず,社内ヒエラルキーとは無関係な「職種相場」を重視しなければならない。退職金などの後払い的性格の賃金をやめ,その分を月例給に回して水準を引き上げるといった工夫も,流動的プロフェッショナルの処遇には必須だ。

  このようなプロフェッショナル処遇の枠組みを人事部門が設計し直すべきであろう。そのスキームで雇い入れるプロには,このケースで見たような的外れな上昇志向を求めることはないはずだ。

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