副業の是非①(人事の視点)
「副業大解禁時代」なんて言葉を見かけるようになった。
私は条件付きで副業に賛成する立場をとっている。でも、あくまで「条件付き」でだ。
わが国が人口減少局面に突入しており、絶対的に労働力人口が不足している。個々人の余力は自社以外の生産活動にも積極的に活用しないと、経済規模は縮小の一途をたどる。
その意味で副業には賛成だ。
だが、いわゆる「正社員」が、これまでのワークルールや身分を維持したまま、副業を行うことには賛成できない。
「賛成できない」以前に、そもそも上手くいかないと思っている。
その理由を考えてみたい。
まず初めに、「副業」にもいろいろあるので、イメージをそろえておく必要があるだろう。
定時後や休日にアルバイトをするのも副業だし、セミナー講師をする、ネットショップを持つ、フリーランスとしてイラストを納品するなんてのもある。
サービスを提供しようが、雇用されようが、モノを販売しようが、「お客様」を相手にすることに変わりはない。
株の売買やマネーゲームは「お客様」と直接やり取りしない点で性質が異なるので、ここでは副業とは呼ばないことにする。
さて、まずアルバイト以外の副業について考えてみたい。
WEBで物を売るにしても、ランサーズやクラウドワークスなどに登録し、フリーランスで働くにしても、正社員で働いている人は、原則として就業時間外にお客様に対応することになる。
しかし、これはお客様に相当の不便を強いる。お客様目線ではなく、どうしても自分本位の仕事の仕方になってしまう。
自分本位のビジネスは長続きしない。
私もランサーズなどを利用して何度かフリーランスに仕事を依頼したことがある。
しかし、込み入った話も電話できず、すべてメールで連絡を取るように指定されるし、相手の返事は深夜か翌日だ。
指示の受け取り間違いを指摘しても、翌日にしか返事が来ないなんてことはざらで、キャッチボールは一日単位、WEB上なのにまるで昭和の文通のようなスローテンポ、すごくフラストレーションが溜まる。
また、仕事が手に負えないとわかると音信不通になることもある。あくまで「副業」という精神的な逃げ道が自分にあるからだろう。何せ受注を匿名でやれるのだから、名前も居所も晒して起業するより、無責任になりがちだ。
一方で、明らかに副業だとわかる人が、本業の仕事中に対応しているケースも珍しくない。
本業で半年間頑張っても、半期の賞与で10万円も差が付かないけど、副業なら一日で10万円ぐらい稼げてしまうという専門職は少なくない。だから、一度やりだすと副業に夢中になる人は多い。本業の仕事中に副業の対応をしてしまうのは避けられないのだ。
正社員としての身分の安定は手放したくない、収入も増やしたい、副業は面白く、匿名でやれば責任は持たなくてよい、たまに本業中にこっそり副業する・・・そんな良いとこ取りと自分本位がまかり通るはずがない。
では、どうすればよいのか?
それは次回に・・・。