キレてます(人事コンサルの日常など)

経営コンサルタント各務晶久が日々の雑感、ノウハウなんかを綴ります

副業の是非②(もっと大胆に)

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前回は自分本位の「良いとこ取り」の副業は続かないという話だった。

 

では、いったいどうすればいいのか?というのが今回のお題だ。

 

私は、副業を解禁するなら中途半端なことはせず、もっと大胆に推進すべきだと考えている。会社の中で、就業時間中に副業をどんどんやらせるくらいがちょうど良い。

 

ただし、これまでの雇用形態やワークルールを前提にすれば無理があるし、すぐに破たんする。

 

副業をどんどん認めて、「強い個人」を育成する社会を目指すなら、雇用契約をいったん終了し、社員ではなく、個人事業主にとして会社と契約を結びなおすような仕組みが必要だ。法人を起こしてもらってもいい。

 

会社はメインクライアント、副業先は少額のサブクライアント、受託金額が違うだけで、どちらもクライアントとして同列だ。場合によっては、受託割合が逆転するかもしれないが、それは会社の看板を外してもやっていける「強い個人」が育っている証拠で、社会として望むべき姿ではないだろうか。

 

会社から受託した業務を個人事業主として責任をもってこなす。そこには「受託作業を完遂する」「求められた成果をきちんと上げる」という、プロとしての自覚が芽生えるはずだ。そうなると、就業場所や就業時間の概念そのものが消え失せる。

 

会社も出入りする個人事業主に執務場所を提供し、好きに使わせる度量を持てばよい。よその仕事にかまけて、自社の委託した仕事の出来栄えが悪ければ、契約更新しないか、社員に戻して副業を認めないか選択を迫ればよいだけだ。

 

個人も好き勝手にやるのだから、このくらいのリスクは背負うべきだ。そもそもメインクライアントである今の会社に迷惑をかけない自信があるから副業をするはずだ。社員の身分を外すことに自信がないなら、初めから会社か、もしくは副業先を軽んじている証拠だ。そうなら副業なんてやるべきではない。

 

ポイントは、個人事業主としてチャレンジし、失敗しても社員に柔軟に戻せる仕組みを設けることだ。たったそれだけで、起業家精神に富んだ組織文化を醸成できるだろう。

 

 

 

 

 

副業の是非①(人事の視点)

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「副業大解禁時代」なんて言葉を見かけるようになった。


私は条件付きで副業に賛成する立場をとっている。でも、あくまで「条件付き」でだ。

わが国が人口減少局面に突入しており、絶対的に労働力人口が不足している。個々人の余力は自社以外の生産活動にも積極的に活用しないと、経済規模は縮小の一途をたどる。


その意味で副業には賛成だ。

 

だが、いわゆる「正社員」が、これまでのワークルールや身分を維持したまま、副業を行うことには賛成できない。

「賛成できない」以前に、そもそも上手くいかないと思っている。

 

その理由を考えてみたい。

 

まず初めに、「副業」にもいろいろあるので、イメージをそろえておく必要があるだろう。
定時後や休日にアルバイトをするのも副業だし、セミナー講師をする、ネットショップを持つ、フリーランスとしてイラストを納品するなんてのもある。

サービスを提供しようが、雇用されようが、モノを販売しようが、「お客様」を相手にすることに変わりはない。

株の売買やマネーゲームは「お客様」と直接やり取りしない点で性質が異なるので、ここでは副業とは呼ばないことにする。

 

さて、まずアルバイト以外の副業について考えてみたい。

 

WEBで物を売るにしても、ランサーズやクラウドワークスなどに登録し、フリーランスで働くにしても、正社員で働いている人は、原則として就業時間外にお客様に対応することになる。
しかし、これはお客様に相当の不便を強いる。お客様目線ではなく、どうしても自分本位の仕事の仕方になってしまう。

自分本位のビジネスは長続きしない。

 

私もランサーズなどを利用して何度かフリーランスに仕事を依頼したことがある。

しかし、込み入った話も電話できず、すべてメールで連絡を取るように指定されるし、相手の返事は深夜か翌日だ。
指示の受け取り間違いを指摘しても、翌日にしか返事が来ないなんてことはざらで、キャッチボールは一日単位、WEB上なのにまるで昭和の文通のようなスローテンポ、すごくフラストレーションが溜まる。

 

また、仕事が手に負えないとわかると音信不通になることもある。あくまで「副業」という精神的な逃げ道が自分にあるからだろう。何せ受注を匿名でやれるのだから、名前も居所も晒して起業するより、無責任になりがちだ。

一方で、明らかに副業だとわかる人が、本業の仕事中に対応しているケースも珍しくない。

本業で半年間頑張っても、半期の賞与で10万円も差が付かないけど、副業なら一日で10万円ぐらい稼げてしまうという専門職は少なくない。だから、一度やりだすと副業に夢中になる人は多い。本業の仕事中に副業の対応をしてしまうのは避けられないのだ。

 

正社員としての身分の安定は手放したくない、収入も増やしたい、副業は面白く、匿名でやれば責任は持たなくてよい、たまに本業中にこっそり副業する・・・そんな良いとこ取りと自分本位がまかり通るはずがない。

 

では、どうすればよいのか?

それは次回に・・・。

 

 

中小企業診断士か国内MBAか(3)コンサルの実務で役立つのは?

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前々回、前回と中小企業診断士と国内MBAの比較をお届してきた。今回は、どちらがコンサル実務で役立つかを考えてみたい。

 

私の場合、国内MBA取得中(通学中)に、大手のコンサルティング・ファームに入社した。

そこでは、力量に応じてどんなテーマで仕事を受注してもよいのだが、当然、初めは専門分野(人事分野)で勝負することになる。

 

しかし、人事分野でコンサルティングを行うにも、経営に関する網羅的知識が必要で、MBAで学んだものだけでは到底足りない。一から勉強しなおさないと、クライアントの前ではボロが出ないか心配だった。

 

効率的、かつ体系的に知識をインプットできるのが中小企業診断士の資格取得だったので、MBAを取った翌年、さらなる自己研鑽の意味で診断士の資格を取得した。

 

コンサルティングは抽象概念を扱うため、中小企業診断士の取得だけでは不十分だ。しかし、MBAでインプットする知識だけではコンサルティングの実務には耐えない。

 

なかなか、両方の長所を兼ね備えたカリキュラムは見つけられない。

そこで、私のおススメは両方を取得することだ。

 

コンサルタントは企業ドクターに例えられる。多くの人の命運を左右するかもしれない企業ドクターなら、二つとも嗜み(たしなみ)で取得するくらいでちょうどいいのではないだろうか。

 

実際、コンサルティング・ファームで両方取得している人が多い。彼らは、常軌を逸するようなハードな仕事をしながら、片手間で勉強しているのだ。

 

忙しさや費用を言い訳にする人が多いが、知識商売の先端でプロフェッショナルとして活躍するなら、これぐらいのことで尻込みしない方が良い。

 

国内MBAは退職して通わなければならないフルタイム型よりも、働きながら通えるパートタイム型が人気だ。実際に通ってみると、夜間の授業を終えてから仕事に戻る猛者も少なくない。

 

社会人になってから他業界のビジネスマンと意見交換できるのは貴重な機会だし、大いに刺激を受ける。

 

何よりも忙しい合間に時間を作って勉強に励むので、自分自身のキャパシティーが上がるのを実感する。大学院を修了してからしばらくは、時間が余って仕方がなかった。通学する前と同じ状況に戻っただけなのに、前はなぜあんなに忙しかったのか疑問に思うほどだ。

 

その余裕を生かして中小企業診断士の勉強を始めたが、意外にも面白かった。

特に二次試験が面白い。というかよく出来ている。

 

コンサルティングとは程遠い、国語の試験のような内容なのだが、すぐ合格する人と、何度受けても通らない人に分かれる。基本的な読解力、論理構成能力、基礎学力がないと手こずるようだ。

 

コンサルティングとは程遠い」なんていうと、試験オタクから異論続出かもしれない。でも、実際はこんな少ない情報で課題解決策は立てない。せいぜい仮説の前段階(アタリをつける程度)までの作業だ。

 

与件のなかで、時間内にベストな判断をしていくのは、ゲーム感覚で面白い。

私は2カ月しか勉強しなかったので、本来もっと奥深いものかもしれない。

 

この資格試験のお勉強は、実はコンサルよりも経営者にこそおススメだ。

 

 

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中小企業診断士か国内MBAか(2)コンサル転職には

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前回、中小企業診断士と国内MBAの違いに触れてみた。

 

さて、今回はコンサルタントにはどちらが役立つかを考えていたい。まず、コンサルタントへの転身についてはどうだろう?

 

独立系コンサル会社(船井総研タナベ経営など)では中小企業診断士と国内MBAの価値を同列に扱っているようだ。

 

一方、外資系や大手シンクタンクでの採用では、どちらかというとMBA取得者が歓迎されているように思う。

 

工数稼ぎで(受注金額引き上げのため)大量に人を常駐させる一部の悪徳外資系コンサルファームなどは別にして、良識あるコンサルティングファームでは、社会人経験すらない新卒はコンサルタントとして採用しない(補助者としての採用は別)。

これは誰でもわかることだ。

 

当然、コンサルタントはキャリア採用が中心となる。

 

社会人の応募者がコンサルを志望するからには、少なくとも自分の専門分野を確立してエントリーしていると考えるのが普通だ。

だから応募者の「知識」はある程度の水準と見なして選考することになる(実際には専門性がまったくなく、箸にも棒にもかからない人が多いのだが)。


コンサルタントとして、「知識」の先に必要な能力は、積み上げた個別の経験を一般化して伝える能力、あるいは、抽象概念を具体例を挙げて説明する能力だ。

 

抽象と具象を自由自在に行ったり来たりする能力は、MBAをはじめとする高等教育で磨かれる(診断士の試験で得られるのは知識中心だ)。


実は、あまり一般には知られていないが、コンサルティング・ファームでは、MBAに限らず、さまざまな分野の修士や博士号を取得した人を歓迎している。これは抽象概念を取り扱う訓練を受けているからにほかならない。

 

大手へのコンサル転職では中小企業診断士より国内MBAがやや優勢のような気がするが、その他の面ではどうだろう?

 

それについては次回に・・・。

 

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中小企業診断士か国内MBAか(1)

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経営コンサルタント志望者からよく、中小企業診断士を取得した方が良いのか、国内MBAを取得した方が良いのかと質問を受けることがある。海外のMBAは離職を伴うし、取得費用も違い過ぎて、診断士と天秤にかける人はいない。


私は国内MBAと中小企業診断士の二つを取得したので、わりと公平な立場で両者を見ることができる。


1. 中小企業診断士


中小企業診断士経営コンサルタントの唯一の国家資格だ。

経営コンサルタントに資格は不要だが、経済産業大臣が一定のレベル以上の能力を持った者を登録する制度を整えている。
名称独占資格と呼ばれ、資格試験に合格した者でないと「中小企業診断士」を名乗ることができない。


さて、この中小企業診断士、資格試験をパスするためには広範で網羅的な「知識」が必要だ。実際のところ、どこの国内MBAに行っても、なかなかここまで網羅的な経営関連の広範な知識は学べない。

これらの知識は、経営コンサルタントとして知っていて当然のことが網羅されており、基礎的素養を形成するにはもってこいだ。

 

2.国内MBA

一方、国内MBAコースで学ぶのは細かな知識ではなく、抽象概念だ。

大学院教育なので、個別にみられる事象を抽象化・一般化し、そこから導き出される汎用的な理論や教訓などを紡ぎだす訓練を受ける(この点については前回の記事を参照)。

高等教育なので、海外のMBAだろうが、国内のMBAだろうが、原則同じである。

私が国内MBAに通ったのは15年近く前だが、当時近畿圏では、コースの充実度や歴史から実質的に二択だった。今では、全国どこでも充実したMBAカリキュラムが受けられる時代になっている。

MBAは細かな知識教育ではないので(知識教育なら学部だ)、簡単な経理の仕訳さえ知らないまま修了する人も多い。多くの人が持つMBAのイメージは、おそらく中小企業診断士の学習範囲に近いのだろう。

誤解を恐れずにざっくり言えば、中小企業診断士がインプット中心、MBAがアウトプット中心といえるだろう。

 

さて、この二つ、どちらが経営コンサルに役立つのだろうか?

 

その点については次回に・・・。

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抽象度を上げてみよう

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メーカー勤務時代のことだ。

本社に異動した直後、上司から「お前はせっかくの現場経験を一般化して話せないんだよなー」と言われたことがある。

 

当時の私は、「個々の職場事情を一般論として話せるわけない、変なこというなぁ」くらいに聞いていた。

 

今振り返っても、その上司はかなり舌足らずだったが、当時の私の理解力にも問題があった。

 

上司が言いたかったのは、自分の経験の抽象度を高めて、一般化せよということだったのだ。

個別事象の抽象度を高めると、汎用性が上がり、普遍化できる。

 

こう書いても、よくわからないかもしれないので、具体例で説明したい。

 

介護施設を運営するクライアントで起きたトラブルで次のようなものがある。


女性介護職員が大きく二つの派閥に分かれ、それぞれが相手の一派を陰で激しく罵っていた。言い分はこうだ。

 

Aグループ

「ご利用者様(高齢者)はお客様だ。いくら親しくなっても敬語は崩すべきでない。それなのに、あの人たちの言葉遣いときたら・・・許せない。」

 

Bグループ

「いつまでも敬語を使い続けると距離が縮まらない。親しみを込めてフレンドリーに接するべきだ。あの人たちのしゃべり方は他人行儀で、真心がまったく感じられない。」

 

どちらもそれぞれ正論で、正解はない。

 

ここまでが、個別事象である。

 

多くのビジネスパーソンは、組織内の課題だけに対処すればよい。

こういう事象を目の当たりにしても、解決すれば仕事はおしまいだ。

だから、経験したケースの抽象度を高めて一般化し、概念的に整理するよう訓練されていない(かつて私自身もそうだった)。

 

この事例の抽象度を極度に上げると、「組織構成員同士の対立」となるが、これでは抽象度が高すぎて、一般化して適用できる経験則が得られない。

 

もう少し、抽象度を落とすと、「価値観の分かれる事柄については、予め組織のポリシーを明確にしておかいと、構成員同士でコンフリクトを起こす」とでもいえるだろうか。

 

これくらいの抽象度なら、普遍性を持つ一般化ができており、この事例から得られた経験則や教訓として組織外で語ることができる。

 

どこの組織で、どんな仕事をしていても、日々課題に直面するはずだ。

そこでの経験を抽象化、一般化する訓練を積むことが肝心だ。

特に、管理職や経営層には必須の能力であり、これができないと、いくら名プレイヤーでも名監督にはなれない。

 

よく、微に入り細に入りクドクド話す人がいて困るだろう。「ひとことで言うと何?」と言いたくなるような人だ。こういう人は概念的にものを考える訓練が出来ていない。

 

経営コンサルを目指す人は、徹底的に抽象思考の訓練を積んで欲しい。

抽象概念を扱う思考訓練が出来ていないと、仮に経営コンサルの職にありつけても、著しいミスマッチを起こすことは目に見えている。

 

中小企業診断士の資格を取ってもコンサルができない人はこの点に問題があるのだが、詳しくは次回に・・・。

 

 

商学部と経営学部(MBAに通う前に)

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とある大学教授に「商学経営学の違い分かりますか?」と聞かれ、固まったことがある。

 

皆さんはこの違い分かるだろうか?

 

その教授によると、商学は文字通り「商い」(あきない)の学問だ。つまり「会社と会社」「会社と個人」といった「組織と外部」のかかわりに関する学問をいうそうだ。

一方、経営学は会社の内部管理、Management(マネジメント)の学問だ。

 

マーケティングは企業と外部のかかわりなので商学系統、組織や人事などの分野は経営管理なので経営学系統という整理がつく。

 

この教授の整理が大学の世界で一般的なのか、オーソライズされたものかどうかは、申し訳ないが確認していない。「なるほど」と腑に落ちただけだ。無責任なようだが、厳密な区分けに関心があるご自身で調べて欲しい。

 

それよりも大事なことは、この区分けに従った時に、学びたい分野によって、商学系統が強い大学か、経営学系統が強い大学かをよく調べることだ(学部名や研究科名でなく、実態を調べるべき)。

 

人生100年時代に突入し、社会人の学びなおしとしてMBAはすっかり定着している。大学のブランドイメージよりも、むしろこのような区分けで大学院を選択したほうが後悔は少ないだろう。

 

ちなみに、伝統と格式の高い「三商大」といわれる「一橋、神戸、大阪市大」のうち、なぜ神戸大だけ経営学部になったのか謎だ。